萌え狼らくご    鑑賞と解説







 伝説の落語家、萌え狼の残した作品と数々の軌跡。
 現代落語界に颯爽と現れ、そしてパッと散った萌え狼師匠。
 こんな噺家、この先もう出て来ねえんじゃねえかな……。


 →関係者へのインタビューを読む












   『晴れ・雨・くもり』


 <鑑賞>
   相も変わらず登下校中の少女にちょっかいを出しているパッピローニ。本日は趣向とし
  て「思ひ出ぽろぽろ」をモチーフとし、女の子に晴れの日と雨の日と曇りの日、どれが好
  きかを訊ねてみることに。女の子がおそるおそる答えようとすると、言葉を発する前に「同
  じだ!」と喜ぶパッピローニ。だってパッピローニには聞こえるのだ。次第に質問はエスカ
  レートしていくが答えはいつも「同じだ!」……。

 <解説>
   パッピローニをどこまでも演じることにより、言葉を発しない怯える少女を描出しようとし
  た野心的作品。落語の新たな可能性を切り拓き、そして閉ざしたと評された。








   『表面積』


  <鑑賞>
   恋人がいて、でもそこに異世界から美少女が召喚され、しかもその謎の美少女が本来
  あるべきでないこの世界で存在してゆくには男性の精液を浴びる必要がある場合、当然
  ながら人助けとして自分は彼女に自らの肉棒を差し出す覚悟はあるのだが、しかし恋人
  としてはたとえそれが人助けとはいえ、彼氏の象徴が見知らぬ少女に咥えられるのはお
  もしろいはずがなく、しょうがないので自分もそこに参加すると言われた場合、ペニスの表
  面積を一体どのように分配したらいいだろうかと煩悶する、男子校に通う童貞少年の日本
  史の授業中に見た夢……。

  <解説>
   萌え狼はこの噺により「夢落ち」ならぬ「夢のどか」を発明したとされる。窓から春の陽が
  ぽかぽかと、少年の紺色の学ランに降りかかる……。








   『ハーレム灯』


  <鑑賞>
   死ぬ直前、それまでの人生が走馬灯のようによみがえると聞きつけた青年は、人生の
  うちで味わった少女美を一気に感じられるのなら儲けもの、と死ぬことを決意する。しかし
  首を吊り死にそうになった瞬間、彼の頭に去来したのは怒涛のごとくに連なる官能小説
  の文面であった。彼は童貞だった。それから幸運にもなんとか命を取り留めた青年は、今
  後の人生を走馬灯に出現する美少女を充実させるために生きようと誓うのだった。プロッ
  ペッパッピローニ21歳の秋のお話……。

  <解説>
   パッピローニの過去が明かされる噺。官能小説の記述が波のように襲い掛かってくる場
  面の迫力が見どころ。








   『はじめてのブラ』


  <鑑賞>
   中学二年生。気付けばクラスのみんなはもう自分以外全員ブラを着けていて、焦る茜。
  そこで日曜日、友だちと一緒にブラを買いに行き、帰宅後早速着けてみることに。だけど
  なかなかうまく着けられない。ホックがうまく嵌まらない。なんとか着けて鏡を見てみるけ
  れど、実際ほとんど胸の膨らみなんてないから、なんだか不恰好。やだな。なんか不潔
  な感じもする。あああ、自分は女になってゆくのだな……。

  <解説>
   どこまでも初めてのブラジャーを着ける少女の心理描写の噺。萌え狼晩年の大傑作。
  手拭いがブラ、扇子がホックになることは60歳の新発見であった。








   『天野老人』


  <鑑賞>
   エロいことに興味があって仕方ない男子中学生ふたり。近所に天野というエロい話で有
  名な老人がいるということで、自宅を訪ねる。そこで語られたのは天野がかつて教職に就
  いていた頃の話。女子校に勤務していた若き天野のピンク色の思い出の数々。しかし男子
  中学生の「セックスしたか?」という質問には必ず首を振る天野老人。なぜかと理由を訊ね
  られ天野老人は……。

  <解説>
   パンチラ、入浴、服裂けといった、決して乳首は出さない少年漫画的なエロさを扱った噺。
  脱いでチンポ欲しがって涎を垂らすんじゃない、脱ぎそで脱げない、あのときのあの感じが
  よみがえる。オチは秀逸。








   『フェラチオ指南』


  <鑑賞>
   ある家の門に「フェラチオ指南教室」の看板が立てられているのを発見し、好奇心旺盛な
  女子高生が、嫌がるクラスメイトを付き添いにして訪問する。そこで実際に師範の男根を用
  いてフェラチオの指導を受けるが、なかなかうまくいかない。その様があまりに退屈で、黙
  って眺めていた付き添いのほうの少女は呆れて大きなあくびをひとつ。それを見て師匠が
  「あぁあっ」……。

  <解説>
   落語と言えば蕎麦を啜る音が有名だが、これはチュパ音にこだわった噺。扇子を男根に
  見立て、萌え狼はひたすらにチュパ音を劇場に響かせた。ラストに手拭いをティッシュに見
  立てるところに芸の細かさがある。








   『愛図』


  <鑑賞>
   新人アイドルのクラスメイト、伊織に一途に想いを寄せる平凡な高校生の一貴。すったも
  んだの挙句、クリスマスの夜に奇跡的にも両想いに。ホテルでふたりですごす夜のドキド
  キ、伊織の本格的な女優修業、伊織以外の女の子との交感、生じてゆく擦れ違い、ストー
  カー撃退、それに伴う意識不明、そのようなさまざまな出来事がありつつも、なんとかハッ
  ピーエンドを迎える。そんな一貴のもとに、かつて心を通い合わせた幼なじみのいつきから、
  一通のビデオレターが届く……。

  <解説>
   不器用な男の本格恋愛ストーリー。全編を通して演じた場合、高座は8時間を超える。コ
  ミックスを読めばそれで済む話なのだが、要するにやりたかっただけの萌え狼が8時間の
  それを終えた末に浮かべる恍惚の表情は、一見の価値があったりなかったり。








   『キルタイムコミュニケーション』


  <鑑賞>
   冴えない童貞少年タケルが転入した学校は、なぜか女子校だった!? 学園で唯一のチンポ
  を目掛け、可憐な乙女たちの果てのない抗争が始まる! 巨乳幼なじみ、ツンデレ委員長、
  ドジっ子くのいち、半裸猫耳、性教育大好きスポーツ万能娘……一体タケルのチンポは誰の
  膣へ収まるの? 精液をいちばん多くゲットするのは誰? そしてラストに待ち受ける怒涛の
  ハーレムエンド……。

  <解説>
   キャラが立ってるような立ってないような複数の少女たちの演じ分けが難しい噺。腕やら脚
  やら舌やらが縦横無尽に入り乱れるハーレムエンドの情景描写は特に工夫が必要。本の朗
  読をしているだけだろうという指摘もあるが、高座を聴きながら堪らず自慰行為に突入する中
  学生を前にしては、新しい落語のパワーというものを感じずにはいられない。








  『こうこつ』


  <鑑賞>
   老師が嬉しそうにしているので理由を訊ねたところ、電車に乗っていたら手の甲に「500円」
  と書いた女子中学生を見かけた、と言う。そして老師が言うには、さんざんその真意を考えた
  結果として、それは少女自身の値札であり、500円でキスぐらいしてくれるんじゃないかと思い、
  もうちょっとで話しかけようかと思って、自分と女子中学生の間になんらかの交感が生まれる
  のではないかとドキドキしたとのこと。老師は『500円求めん少女に我こそは5万捧げんことの
  はかなし』と歌まで詠む。それを聞いたパッピローニは自分も電車に乗り、手の甲に「 ● 」と
  書いた少女を発見する。あれはきっとエッチなことを書こうと思って恥ずかしくなって塗り潰した
  あとだ、とはしゃぐパッピローニに老師が一言……。

  <解説>
   萌え狼はその業界では有名な、女子中学生コウコツ文字収集家であった。これはその趣味
  を素材にした噺。ほくろだっていいじゃない。じゃあほくろを愛せばいいだけの話じゃない。51歳
  だって空だって飛べる!













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